包丁に使われる鋼材に「V金10号」と呼ばれるものがあります。
包丁を探している時にたびたび見かける割と有名な鋼材ですね。
ここではそんなV金10号の特徴を紹介したいと思います。
結論から言うと、V金10号は家庭向けの包丁として非常におすすめの鋼材なんですよ。
包丁選びの参考になればと思います。
V金10号はステンレスの中でも最高峰の鋼材
V金10号は、武生特殊鋼材株式会社によって開発されたステンレス鋼材の1種です。
高級ステンレス鋼として知られていて、錆びない包丁の中では最高峰だという呼び声も高いんですよ。
ステンレスの中でも錆びにくく、かつ最高峰の切れ味を持つV金10号。
ダマスカス包丁の割り込みに使われたりもつか使われたりと、切れ味とその持続性に重きが置かれています。
切れ味の良い包丁が欲しい方におすすめの素材というわけです。
ステンレスは鋼に比べて切れ味が劣ると見られがちですが、V金10号は切れ味に特化した作りになっているため大差なく使えるんじゃないでしょうか。
ここからはV金10号の特徴をさらに詳しく見ていきたいと思います。
V金10号の含有成分から見る特徴
まずは、V金10号の主な含有成分をご覧ください。
- C(炭素)
- Cr(クロム)
- Mo(モリブデン)
- V(バナジウム)
- Co(コバルト)
少しずつ噛み砕いてみてみましょう。
炭素を多く含むため硬度が高く切れ味が良い
V金10号は炭素を多く含みます。
10号以外に1号、2号、5号…なんて規格もあるんですが、その中で特に多く炭素を含むのがV金10号です。
炭素を多く含むほど包丁は硬くなるんですが、それはつまり切れ味が上がるということ。
耐摩耗性も高いので、その切れ味の持続性も期待できます。研ぐのが面倒な人にもおすすめですね。
ステンレス鋼材はまず炭素の含有量に注目してみると、基本スペックが判断できるのでぜひ覚えておいてください。
ただし、硬い鋼材ということは言いかえれば靭性が低いということ。
ちょっと研ぎづらいのが難点ですね。
クロム、モリブデン、バナジウムでさらに硬度が高くなる
クロム、モリブデン、バナジウムも包丁の硬度を高める成分の1つです。
「モリブデンバナジウム配合」なんて書かれた包丁をみたことあるかもしれませんが、この鋼は通常のステンレスよりも丈夫で切れ味が持続しやすい特徴を持っています。
つまりV金10号は切れ味とその持続性にこだわったステンレス包丁というわけです。
ステンレスは鋼より切れ味が劣ると思っている方も多いと思いますが、V金10号なら全く劣らない性能が体感できるでしょう。
モリブデンバナジウムが使われている包丁はけっこう多いんですよ。
下記の記事で詳しく紹介しているので興味がある方はご覧ください。
脱炭を防ぐためのコバルトコーティング
最後にコバルトですが、こちらは希少金属となります。
これは脱炭(鋼材を加熱する際に炭素が失われる現象)を防ぐためにコーティングしているそうで…。
上記で紹介した成分の特徴を最大限に引き出してくれるということです。
「コバルト合金鋼」なんて鋼材も包丁を選ぶ際によく見かけると思いますが、その包丁は切れ味が高く耐摩耗性に優れていることが多いですね。
包丁を扱うメーカーごとにいろんな呼び方をするので難しいですが、含有成分を噛み砕いてみることで特徴がはっきりしてきます。
V金10号が使われているおすすめ包丁
それではV金10号が使われているおすすめ包丁を何本が紹介したいと思います。
あの有名包丁メーカーの商品にも使われてたりしますよ。
藤次郎 DPコバルト合金鋼割込 三徳包丁
まずは有名包丁メーカーである藤次郎の「DPコバルト合金鋼割り込み 三徳包丁」です。
素材名はDPコバルト合金鋼となっていますが、藤次郎のDPコバルト合金鋼はV金10号のことを指してるみたい。
割り込み包丁となっているため、比較的安価な値段でV金10号の切れ味を体感することができます。
刃の部分にV金10号を使い表面を別の素材で補うことで、金額が抑えられているわけですね。
ちなみにハンドルもステンレスなので、メンテナンス性にも優れています。
堺味正作 ダマスカス鋼17層 V金10号 牛刀
上記と同じく割り込み包丁で、刃にV金10号を使いつつ、表面は積層17層のダマスカス鋼が使われています。
これは切れ味も数段増しです。
10,000円越えの包丁なので少し高価ではありますが、V金10号の丈夫さは冒頭より紹介した通り。長く使える1本となるでしょう。
切れ味の良い包丁を長く使いたい方におすすめです。
V金10号は切れ味と錆びにくさを兼ね備えた包丁
V金10号は切れ味の良さと錆びにくさを兼ね備えた鋼材です。
手入れが面倒だから鋼ではなくステンレス包丁を買う人が多いと思いますが、最近はV金10号のように切れ味の劣らないステンレスもあるんですよね。
切れ味も長く持続するので、普段包丁をほとんど研がない人にもおすすめ。
こうなってくるとやはり普段使いの三徳包丁や牛刀なんかはステンレスを購入するのが無難ですね。
ただし、いざ包丁を研ごうとなると硬くて研ぎづらいので、荒砥・中砥・仕上げ砥を揃えておくことをおすすめします。
研ぎづらさは砥石でカバーできるのでご安心ください。